羊水検査とは?わかること・時期・リスクなどをわかりやすく解説

妊娠して気になるのが、赤ちゃんの健康状態です。健康状態を知るために、羊水検査を考えている人も多いでしょう。

しかし羊水検査にはリスクもあるため、実施にあたっては慎重な検討が必要です。

そこで本記事では、羊水検査とは何か紹介します。また羊水検査でわかることだけでなく、実施の時期やリスクについてもまとめました。

妊娠中の不安を解消するためにも、ぜひ記事の内容をチェックしてみてください。

目次

1.羊水検査とは? 

羊水検査とは、胎児の染色体異常や遺伝性疾患などを調べるために行う検査のことです。羊水を採取して、そのなかに浮遊している胎児の細胞を調べます。最近ではNIPTで陽性反応が出たときの確定診断として知られているのが羊水検査です。

羊水検査には4つの種類があります。

  • 染色体分染法 
  • qf-PCR法 
  • マイクロアレイ検査
  • FISH法

検査方法によって調べられる内容には違いがあります。

1-1.羊水検査でわかること 

羊水検査では次のようなことがわかります。

  • 染色体異常(21トリソミー・18トリソミー・13トリソミー・ターナー症候群など)
  • 開放性二分脊椎
  • 無脳症

また遺伝性疾患や特定の疾患を調べる目的で実施されることもあります。性別も判定できますが、羊水検査でわかっても告知は行われません。

1-2.羊水検査を受ける時期 

羊水検査を受ける時期は妊娠15~18週のあいだです。妊娠15~18週と決められているのには、次のような理由があります。

  • 流産の確率が低い
  • 羊水の量が増えて安全に採取できる
  • 結果次第で次の処置が必要になる

羊水検査を受けられる時期は短めです。検査を希望する場合は、なるべく早い段階で医師に相談しましょう。

2.羊水検査の流れ

羊水検査を希望しているのなら、どのような流れなのかも把握しておきましょう。

クリニックによる違いもありますが、基本的な羊水検査の流れは次のようになっています。

  • 胎児の状態を確認する
  • 羊水を採取する
  • 胎児の状態を再度確認する
  • 薬を服用する
  • 結果を聞く

5つのステップについて、それぞれ紹介していきます。

2-1.①胎児の状態を確認する 

羊水検査にあたっては、まず超音波検査で胎児の状態を確認する必要があります。

確認するのは次の項目です。

  • 胎児の心拍数
  • 胎児の発育
  • 羊水量
  • 胎盤の位置

また母体の血液検査も必要です。

羊水検査では、妊婦さんのおなかに針を刺して羊水を採取します。そのため胎児の健康状態だけでなく、羊水量や胎盤の位置の確認が必要です。

2-2.②羊水を採取する

超音波検査で問題がなければ、羊水の採取が行われます。採取にあたってはおなかの消毒が必要です。おなかの消毒をしたら布で覆い、おへその下あたりに細い針を刺してエコーを見ながら羊水を採取します。

通常は痛みが軽度であるため、麻酔は行われません。

採取量の目安は約20ミリリットルです。ただし1度の穿刺で羊水が採取できない場合には、2~3回穿刺をすることがあるでしょう。

無事に羊水が採取できたら、消毒したうえで傷口に絆創膏を貼ります。

2-3.③胎児の状態を再度確認する 

穿刺によって羊水を採取したら、再度超音波検査によって胎児の状態を確認します。胎児に異常がなければ検査は終了です。

30分ほど安静にしたら、再び超音波検査が行われ、問題がなければ帰宅できます。検査は日帰り入院で行われますが、問題がなければ1時間ほどで終了です。

2-4.④薬を服用する 

羊水検査後は薬の服用が必要です。感染症を予防するための抗生物質と、子宮の収縮を抑制する薬が処方されます。

処方された薬は必ず定められた期間しっかりと服用してください。横になっている必要はないものの、安静が必要です。

無理をすると体調が悪化するおそれがありますので、仕事は休みましょう。

2-5.⑤結果を聞く 

3~4週間後、病院で羊水検査の結果を聞きます。

検査に時間がかかるのは、培養によって胎児の細胞を増やすためです。培養にかかる期間が約2週間で、そのあとに判定が行われます。くわしい日程はクリニックによって違うため、検査時に確認しておきましょう。

ただし細胞が増えないと、3週間を待たずに連絡が入ることもあります。細胞が増えなかった場合は、別の日に再度検査が必要です。

3.羊水検査で把握しておきたいポイント

羊水検査では把握しておきたいポイントを紹介します。

紹介するのは以下3つのポイントです。

  • 羊水検査ではわからない障害がある
  • 異常があっても治療はできない
  • リスクがある

3つのポイントについて、1つずつチェックしてみましょう。

3.1羊水検査ではわからない疾患がある 

羊水検査で把握しておきたいのが、羊水検査ではわからない遺伝子異常や疾患があることです。精度が高い羊水検査ですが、すべての遺伝子異常や先天性疾患がわかるというわけではありません。

21トリソミーなら、精度はほぼ100パーセントです。しかし21トリソミーでも、モザイク型は出生後に判明するケースがあります。また胎児の細胞がうまく培養されず、結果がわからないというケースもあるのです。

そのため「結果は絶対ではない」と頭に入れておきましょう。

3.2遺伝子異常があっても治療はできない 

羊水検査では「遺伝子異常が見つかっても治療はできない」と把握しておく必要があります。残念ながら、羊水検査は治療を行うための検査ではありません。胎児に遺伝子異常が見つかったとしても、治療はできないのです。

結果によっては妊娠の継続が難しいと感じる人もいるでしょう。

ただし染色体異常に伴う合併症には対策ができる可能性があります。

3-3.リスクがある 

リスクがあるのも、羊水検査を受けるにあたって把握しておきたいポイントの1つです。

各クリニックでは、安全性に配慮したうえで羊水検査を行っています。しかし羊水検査を行うためには、子宮に針を刺さなくてはなりません。そのため確率は低いものの、母体や胎児に影響を及ぼす可能性があります。

検査を受けるにあたっては、慎重な検討が必要です。

4.羊水検査のリスク

羊水検査を受けるなら、どのようなリスクがあるのか知っておく必要もあります。

特に大きなリスクは次の3つです。

  • 流産
  • 感染
  • 破水や出血

3つのリスクについてそれぞれ解説しますので、ぜひチェックしてみてください。

4-1.①流産 

羊水検査には流産のリスクがあります。なぜなら子宮に針を刺し、羊膜と呼ばれる場所に穴を開けるためです。穴から羊水が漏れると、早産につながるおそれがあります。また針による刺激で子宮が収縮するのも、流産する原因の1つです。

流産しても、その原因が羊水検査だとは限りません。とはいえ流産のリスクがあるのは覚えておきましょう。

4-2.②感染 

羊水検査では、子宮内感染のリスクにも注意が必要です。

子宮内感染では次のような影響が出ます。

母体への影響下腹部痛・発熱・子宮収縮による陣痛
胎児への影響脳や呼吸器の障害

感染症を防ぐために、検査後に処方された薬は必ず服用して予防しましょう。

4-3.③破水や出血 

羊水検査では破水・出血も考えられるリスクです。

検査では針を使って羊膜に穴を開けます。稀ですが、そのあとに破水や出血が起こる場合もあるので注意が必要です。

検査後に異変を感じたらすぐに相談しましょう。

5.羊水検査の費用

羊水検査の費用は、10~20万円が相場です。ただしオプションによって費用は変わってきます。まずは受診を考えているクリニックで、必要になる費用を確認してみましょう。

参考として、兵庫医科大学病院での検査費用を紹介します。

(参考)出生前診療外来での遺伝カウンセリングの受診料 – 兵庫医科大学病院 出生前検査・診断

単胎双胎
羊水検査(標準的な方法)135,920円(税込)235,060円(税込)
羊水検査(FISH法併用)185,920円(税込)335,060円(税込)
羊水検査(NIPTで陽性だった場合)なしなし
NIPT165,800円(税込)

兵庫医科大学病院では、NIPTで陽性だった場合、追加費用なしで羊水検査が受けられます。上記のほかに遺伝カウンセリング料や、再診遺伝カウンセリング料が必要です。

ほかにもNIPTで陽性だったときの羊水検査費用をサポートしているクリニックが多く見られます。クリニックによって対応が変わるため、必ず確認しておきましょう。

6.羊水検査でよくある質問

羊水検査を受けるにあたって、不安になっている人も多いでしょう。リスクもあるため、不安になるのも無理はありません。

そこで羊水検査でよくある質問も紹介します。

不安を取り除くためにも、ぜひ内容をチェックしてみてください。

6-1.羊水検査を受けられるのはいつからいつまで? 

一般的に、羊水検査は妊娠15~18週のあいだに実施されます。初期を避けるのは流産のリスクがあり、羊水も少ないからです。15週を超えるころには羊水の量も増えて安全性が高まります。18週までに限られているのは、次の処置が行われる可能性があるからです。

タイミングを逃すと検査ができない可能性もあるので注意しましょう。

6-2.羊水検査に痛みはある? 

基本的に、羊水検査にはそれほど強い痛みがないので安心です。感じ方には個人差があり、痛みがないという人もいれば、筋肉注射程度の痛みがあるという人もいます。

それほど強い痛みではないため、大抵は麻酔もありません。ただし局所麻酔での検査に対応しているクリニックもあります。

痛みに対する不安があるのなら、麻酔を行っているクリニックで相談してみてください。

6-3.羊水検査で流産する確率はどのくらい? 

羊水検査で流産する確率は、0.1~0.3パーセントだといわれています。自然流産の確率と大きな違いはありません。

羊水検査後に自然流産した人もいるでしょう。なお100人に1人の割合で、羊水検査での穿刺後に出血・破水・腹痛が見られることもあります。

6-4.羊水検査に費用補助はある? 

2023年の段階で、羊水検査に対する公的な費用補助はありません。

また次の制度も対象外です。

  • 医療費控除
  • 高額療養費制度
  • 健康保険

3つの制度は治療を対象としているため、検査は対象外になるのです。ただしNIPTで陽性だった人を対象に、羊水検査の費用を負担しているクリニックも多く存在します。

NIPTを検討しているのなら、羊水検査に対する補助を行っているクリニックを選ぶのもよいでしょう。

6-4.羊水検査の精度は? 

羊水検査の精度は、ほぼ100パーセントです。そのため出生前診断の確定検査でも使われています。ただし精度は100パーセントではないので注意してください。

羊水検査で正常と出ても、ごく稀に胎児が21トリソミーだったという事例があるからです。21トリソミーには、標準型・転座型・モザイク型があります。正常・異常どちらの細胞も持っているのがモザイク型です。

モザイク型では検査で正常な細胞のみが検出され、出生後に21トリソミーだと診断されることがあります。

6-5.21トリソミーとは? 

ダウン症候群とも呼ばれるのが21トリソミーです。染色体異常のひとつで、21番目の染色体が通常より1本多くなることで現れます。

21トリソミーは700人に1人の割合で発症する病気です。大きな特徴として知的障害や身体発達の遅れなどが見られます。

個人差があるものの、低身長などの身体的特徴もある病気です。また心疾患・消化器疾患のリスクもあります。

6-6.羊水検査で染色体異常があったら中絶できるの? 

基本として、胎児の染色体異常が理由での人工妊娠中絶はできません。ただし母体保護を目的とした人工妊娠中絶は可能です。

中絶ができる期間は妊娠21週6日までと定められています。羊水検査が行われるのは妊娠15~18週で、検査結果が出るまでには3週間程度必要です。母体保護を目的に人工妊娠中絶をするなら、羊水検査のあと早めに決断しなくてはなりません。

7.羊水検査を受けるべきかは慎重な検討が必要

赤ちゃんの状態を調べられるのが羊水検査です。ただし「羊水検査で陽性が出たらどうするのか」を考えておく必要があります。

染色体異常があると受け入れたうえで出産を決断した人も少なくありません。しかし経済的事情から妊娠の継続を断念する人もいます。

そのため羊水検査を受けるべきかは、夫婦での慎重な検討が必要です。検査について病院でしっかりと説明を受け、慎重に考えたうえで検査を受けるか決めることをおすすめします。

この記事の監修者

森久仁子

大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、平成24年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
【保有資格】日本産科婦人科学会専門医・医学博士・母体保護法指定医・マンモグラフィ読影認定医
【所属学会】日本産科婦人科学会、日本抗加齢医学会
http://www.mori-ladies.com/

2023/09/14
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