新型出生前診断(NIPT)には、「認可施設」と「認可外施設」が存在します。「同じ検査だからどこで受けても同じ」だと考えている人も多いかもしれませんが、実はそれぞれ明確な違いがあるのです。
この記事では、NIPTにおける認可・認可外の定義について詳しく解説し、その違いについて明らかにしていきます。それぞれのメリット・デメリットについても紹介しますので、後悔しない検査先の探し方を知りたい人は、ぜひチェックしてみてください。
1.NIPT検査における認可・認可外とは
NIPTは、母体から採取した血液から「お腹の中の赤ちゃんに先天的異常のリスクがないか」が判定できる「新型出生前診断」のことを指します。NIPTの検査を取り扱っている医療機関は数多くありますが、実は、検査内容や条件には違いがあるのです。
NIPTをおこなう医療機関は、大きく「認可施設」と「非認可施設」に分けられます。まずは、この2つの施設について詳しくみていきましょう。
1−1.認可施設
「認可施設」とは、日本医学会連合から正式に認可を受けた医療機関のことです。認可施設は、日本医学会連合の指針に沿った検査をおこなうため、検査内容や対象者の条件があらかじめ設定されています。
以下の条件をすべてクリアしている医療機関のみが、認可施設として認定を受ける形です。現在認可施設は全国に92か所存在しています。
- 出生前診断に精通している臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーが複数名在籍している
- 専門外来を設置して診療している
- 30分以上の診療枠を設けており、その中で検査の説明とカウンセリングをおこなう
- 検査後の妊娠経過について、フォローアップできる体制が整っている
- 絨毛検査・羊水検査などの侵略的胎児染色体検査(確定検査)に精通しており、安全に検査できる
- 小児科の臨床遺伝専門医とも連携が取れる体制である
- 臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが、検査法への知識を十分に有しており、検査説明やカウンセリングに対応できる
NIPTに関する一連の検査が同一施設内で受けられるのも、認可施設の特徴です。NIPTで陽性判定だった場合は「羊水検査」などが必要になりますが、認可施設であればスムーズに受診できます。
1−2.認可外施設
「認可外施設」は、認可施設のNIPT検査が受けられない妊婦さんのために、あえて「日本医学会連合の認可を受けない」という選択をしている医療機関です。日本医学会連合の認可を受けていないからといって、法律上はまったく問題ありません。
先述したとおり、日本医学会連合ではNIPTの検査内容や対象者の枠組みを明確に定めています。そのため、認可外施設では、より自由度の高いNIPT検査を提供しているのです。
認可外施設は、主にNIPT検査の本場である海外の検査会社に判定を委託しています。日本国内の指針に準ずる必要がないため、希望者は検査内容を自由に選択することも可能です。
2.【比較】認可・認可外の違いとメリットデメリット
ここからは、NIPT検査の認可施設・認可外施設の違いについて詳しく解説していきます。以下は2つの医療機関の違いを簡潔にまとめたものです。
認可施設 | 認可外施設 | |
---|---|---|
対象者 | 制限がある | 制限なし(受診可能な妊娠週数なら誰でも) |
夫婦同伴 | 必要 | 不要 |
検査費用 | 20万円前後 | 9~25万円(内容によって変動) |
検査項目 | 13トリソミー18トリソミー21トリソミー | 1~21染色体検査性染色体検査性別判定 ほか(コース選択制) |
サポート | 十分な遺伝カウンセリングが受けられるその場で不安を解消できる確定検査やその他対応への移行がスムーズ | 対応やサポート内容にバラつきがある(事前にフォロー体制について把握しておく必要がある) |
2-1.NIPT対象者の違い
認可施設と認可外施設では、まずNIPTを受けられる対象者に違いがあります。認可施設で検査を受けるためには、以下の項目に該当していなければなりません。
- 出産時の年齢が35歳以上(高齢出産に該当する人)
- 胎児超音波検査や母体血清マーカー検査で染色体異常の可能性を指摘された人
- 染色体異常を有する子どもを妊娠または出産した既往がある人
- 両親のいずれかが「均衡型ロバートソン転座」を有しており、胎児が13・21トリソミーになる可能性がある
一方、認可外施設ではNIPTの対象者に制限を設けていないため、検査可能な妊娠週数であれば誰でも受けられる特徴があります。
2-2.ハードルの違い
一般的に、認可施設ではかかりつけ医からの予約や紹介状が必要で、原則夫婦同伴での外来受診が求められます。クリニックによっては、採血実施までに2〜3回の外来受診を必要とするケースもあり、すぐには受けられない傾向です。
一方認可外施設では、医師からの紹介や夫婦での受診は不問としている医療機関が多い特徴があります。クリニックによっては予約当日に来院して、そのまま検査が受けられるケースもあるのです。
そのため、共働きで休みを合わせるのが難しい夫婦や、上の子が居て何度も診察に足を運べない妊婦さんなども、検査が受けやすいメリットがあります。
2-3.検査費用と項目の違い
認可施設のNIPTの検査項目は、以下の3つのみに限定されています。
- 13トリソミー(パトウ症候群)
- 18トリソミー(エドワーズ症候群)
- 21トリソミー(ダウン症候群)
そのため、費用はやや高額ではあるものの、どの認可施設でも20万円前後とほぼ変動しない形です。
一方認可外施設では、上記3項目だけなら認可施設よりも安い費用でNIPTが受けられます。さらに、希望者は全染色体検査や性染色体検査なども受けられるため、自由に検査項目を選択できるのが特徴です。
多くの認可外クリニックでは、NIPT検査にコース制を設けています。ただし、検査項目が多ければ多いほど費用は高額になるため、注意が必要です。反対に、相場より安ければサポート体制が不十分な可能性もあります。
2-4.陽性時のサポートの違い
陽性時のサポート体制の充実度は、NIPTで最も重視すべき項目です。認可施設と認可外施設では、陽性時のフォローアップ体制についても違いがあります。
NIPTの判定が陽性だった場合には、診断を確定するための「確定検査」が必要です。しかし、実際に陽性判定を受けてしまうとショックや不安が大きくなり、どうしたらいいかわからなくなってしまう人も少なくありません。
認可施設なら、陽性判定をしたその場で検査後の遺伝カウンセリングが受けられます。「判定結果をどう受け止めるべきなのか」や、確定検査に関する説明も受けられるため、不安や辛さは軽減されるでしょう。
また、確定検査や中絶手術の手配などもスムーズにおこなってくれるため、安心して身を任せられるのもメリットです。
一方、認可外施設では、必ずしも臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが在籍しているとは限りません。場合によっては十分な説明が受けられず不安になったり、自分で確定検査ができるクリニックを探したりしなければならないため、十分注意しましょう。
まとめ
NIPTの検査内容に後悔しないためには、自分に合ったものを選択することが大切です。認可施設と認可外施設では、それぞれメリット・デメリットが異なります。NIPT検査において、自分が重視する項目は何かをよく検討して、検査先を決定してください。
また、認可・認可外にこだわるだけではなく、そのクリニックの口コミや通いやすさについても事前に調べておくことをおすすめします。認可外で検査を受ける際は、サポート面が充実しているかしっかりチェックしておくと、万が一の時も安心です。
この記事の監修者
森久仁子
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局、平成24年和歌山市に森女性クリニックを開院。産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
【保有資格】日本産科婦人科学会専門医・医学博士・母体保護法指定医・マンモグラフィ読影認定医
【所属学会】日本産科婦人科学会、日本抗加齢医学会
http://www.mori-ladies.com/